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最近の睡眠時無呼吸症候群に関して気になった論文の骨子と院長の感想を載せます。
医療関係者を念頭に書いていますので、わかりにくいかもしれませんがご勘弁ください。
28年9月 更新
Oral Appliance Therapy in Patients With Daytime Sleepiness and Snoring or Mild to
Moderate Sleep Apnea: A Randomized Clinical Trial.
Marklund M, Carlberg B, Forsgren L, Olsson T, Stenlund H, Franklin KA
JAMA Intern Med 175:1278-85,2015
眠気のあるAHI30以下のOSAS 96名にOAと偽装置を4カ月装着、ESSとSF-36は有意差
でなかったが、AHIといびきは有意に軽減した(ESS11以上はOA群で53%から24%に、偽装
置群で54%から40%に、AHI5以下はOA群49%、偽装置11%で達成)
OAのしっかりとした効果判定の研究はほとんどなかったと思います。OAで自覚症状に対して
有意差をだすのはかなりの症例数が必要なのでしょうか?
28年7月 更新
Association between endothelial function (assessed on reactive hyperemia peripheral
arterial tonometry) and obstructive sleep apnea, visceral fat accumulation, and serum
adiponectin.
Azuma M, Chihara Y, Yoshimura C, Murase K, Hamada S, Tachikawa R, Matsumoto T,
Inouchi M, Tanizawa K, Handa T, Oga T, Mishima M, Chin K
Circ J 79:1381-1389 2015
133名のOSASで血管内皮機能(反応性充血指数)は、AHI、内臓脂肪、アディポネクチンと相関、
多変量解析では重症OSAのみが血管内皮機能の独立危険因子で、3ヶ月のCPAPで血管内
皮機能は有意に改善。
無呼吸は肥満やアディポネクチンとは独立して可逆的に血管内皮機能を障害するという京都大か
らの報告です。きれいなデータですね。論文の骨子から外れますが、対象群で、軽/中/重症そ
れぞれのBMIは25/25/28なのに、ウエスト88/90/96、VFAは81/120/139なんですね。
28年7月 更新
Association between endothelial function (assessed on reactive hyperemia peripheral
arterial tonometry) and obstructive sleep apnea, visceral fat accumulation, and serum
adiponectin.
Azuma M, Chihara Y, Yoshimura C, Murase K, Hamada S, Tachikawa R, Matsumoto T,
Inouchi M, Tanizawa K, Handa T, Oga T, Mishima M, Chin K
Circ J 79:1381-1389 2015
133名のOSASで血管内皮機能(反応性充血指数)は、AHI、内臓脂肪、アディポネクチンと相関、
多変量解析では重症OSAのみが血管内皮機能の独立危険因子で、3ヶ月のCPAPで血管内
皮機能は有意に改善。
無呼吸は肥満やアディポネクチンとは独立して可逆的に血管内皮機能を障害するという京都大か
らの報告です。きれいなデータですね。論文の骨子から外れますが、対象群で、軽/中/重症そ
れぞれのBMIは25/25/28なのに、ウエスト88/90/96、VFAは81/120/139なんですね。
28年4月 更新
Relationship between Oral Flow Patterns, Nasal Obstruction, and Respiratory Events during
Sleep.
Suzuki M, Furukawa T, Sugimoto A, Katada K, Kotani R, Yoshizawa T
J Clin Sleep Med. 2015 11:855-60
85名のOSASで口呼吸を測定、口呼吸は呼吸障害の間と直後に見られるSAS関連2パターンと
鼻閉時に自発覚醒と関連して起こる1パターンの3種があり、自発覚醒関連パターンは中等症以上
のSASでは少なく鼻閉時のバイパスとして働ている。
東北大在任中から大変お世話になっている鈴木先生のお仕事です。口呼吸に着眼したユニー
クな研究ですが、OSAの病態の解明、検査結果の解釈等において大変示唆に富むデータで今
後の更なる発展が楽しみです。
Effect of below-the-knee compression stockings on severity of obstructive sleep apnea.
White LH, Lyons OD, Yadollahi A, Ryan CM, Bradley TD
Sleep Med. 2015; 16:258-64
22名のOSASで下腿弾性ストッキングを2週間着用したら、AHIが32.4から23.8に低下、コントロール群
(AHI31.2→30.3)に比べ夜間下肢水分低下量が減少、朝の上気道断面積の増加がみられた。
最近、臥位による下肢から頸部への水分移動がOSASの要因として話題になっていますが、
下肢に溜まる水分を弾性ストッキングで減らすことでわずかですが、SASの改善が見られる様ですね。
Intensive versus standard follow-up to improve continuous positive airway pressure
compliance.
Bouloukaki , Giannadaki K, Mermigkis C, Tzanakis N, Mauroudi E, Moniaki V, Michelakis S,
Siafakas NM, Schiza SE.
Eur Respir J. 2014 44:1262-74.
3100名の新規CPAP導入患者を通常のフォロー群と通院 電話フォロー 教育を強化した群に
分けると、2年後に強化群でCPAP使用時間が6.9時間と通常群の5.2時間より長く、ESS、SF-
36、うつ尺度、全死亡、入院回数が有意に減少した。
CPAPの効果がえられる使用時間については、根拠となるデータが少なく、短時間でもそれなり
の効果が得られると思っていたのですが、徐々に長時間使用の有効性を示すデータが出てき
ましたね。
28年1月 更新 新しい年になってしましました。
Continuous positive airway pressure in older people with obstructive sleep apnoea syndrome
(PREDICT): a 12-month, multicentre, randomised trial.
McMillan A, Bratton DJ, Faria R, Laskawiec-Szkonter M, Griffin S, Davies RJ, Nunn AJ,
Stradling JR, Riha RL, Morrell MJ, PREDICT Investigators
Lancet Respir Med
65歳以上の新規診断OSAS 278名をCPAP治療群と非治療群に分けると、CPAP群でESSは有
意に低下、ヘルスケアコストは低下傾向にあった。
高齢者に対してCPAPの有効性があるかを検討した研究です。有効であると著者らは結論づ
けていますが、データは微妙か、有効でないことを示唆するような…。
27年9月 更新 またまたしばらくサボってしまいました 夏も忙しくて...(__)
Obstructive sleep apnea is associated with cancer mortality in younger patients.
Martinez-Garcia MA, Campos-Rodriguez F, Duran-Cantolla J, de la Pena M, Masdeu MJ,
Gonzalez M, Del Campo F, Serra PC, Valero-Sanchez I, Ferrer MJ, Marin JM, Barbe F,
Martinez M, Farre R, Montserrat JM, Spanish Sleep Network
Sleep Med 15:742-8 2014
5427名のSAS患者を4.5年フォローし527名ががんと診断。SpO2 90%以下時間と死亡率はHR1.
21で有意に関連し、癌患者に限ってもHR1.19で有意だった。特に65歳以下ではAHIとSpO2
90%以下時間ががんの死亡率との関連が強く見られた
最近、SASと癌の関連を示す疫学データが多くなってきました。無呼吸によって引き起こされ
る有害事象のうち低酸素が関連しそうなことと、SASと癌の関連が若年層で強かったことはど
ちらも肯首できるデータですね。
Obstructive sleep apnea and incident diabetes. A historical cohort study.
Kendzerska T, Gershon AS, Hawker G, Tomlinson G, Leung RS
Am J Respir Crit Care Med. 190:218-25, 2014
8678名の糖尿病のないPSG施行者を67カ月フォローし、1017名(12%)が糖尿病を新規に発症し
た。AHIが30以上の群では5以下の群より30%糖尿病の発症率が高かった。
SASが糖尿病発症の要因となるか、否かは否定的なデータも出ていましたが、こちらは肯定
的なデータですね。今後も更にデータの蓄積が必要な領域なのでしょうね。
27年2月 更新 またまたしばらくサボってしまいました 冬は忙しくて...(__)
Role of sleep apnea and continuous positive airway pressure therapy in the incidence of
stroke or coronary heart disease in women.
Campos-Rodriguez F, Martinez-Garcia MA, Reyes-Nu?ez N, Caballero-Martinez I, Catalan-
Serra P, Almeida-Gonzalez CV
Am J Respir Crit Care Med 189:1544-50 2014
OSA疑いの女性967名を6.8年フォローしたら、脳血管障害と虚血性心疾患の発症率は未治療
OSAS群(AHI)10)で非OSAS群より有意に高く、Hazard ratioは各々6.44、1.77であった。治療
OSA群と非OSAS群との有意の差はなかった。
従来は男性のみのデータが多かったOSASの予後調査ですが、やっと女性のデータもそろって
来ましたね。女性ではSASの血管障害は心より脳により影響するのでしょうか。
Prevalence and associated factors of obstructive sleep apnea in patients with resistant
hypertension.
Muxfeldt ES, Margallo VS, Guimar?es GM, Salles GF
Am J Hypertens 27:1069-78、2014
難治性高血圧422名(62.4歳 男31%)に、PSG施行したら82%がAHI5以上、56%がAHI15以上
で、男性、高齢、糖尿病、肥満、腹囲、首周囲径、夜間の収縮期高血圧がAHI15以上の群で
有意に多く見られた。
難治性高血圧症の方に無呼吸が多くみられるのはその通りだと思いますが、無呼吸が難治性
高血圧の成因にどの程度関わっているのかが、今後の課題でしょうね。Prospective Studyが
必要かな。
Effect of addition of chin strap on PAP compliance, nightly duration of use, and other
factors.
Knowles SR, O'Brien DT, Zhang S, Devara A, Rowley JA
J Clin Sleep Med 10:377-383、2014
CPAPを新規処方したSAS124名中 38名がチンストラップを使用 非使用者に比べリーク量
CPAP使用中のAHI、使用時間(330分vs383分) CPAPコンプライアンスが有意に良好であった。
装着感の悪さから当院でのチンストラップの評判はあまりよくないのですが、こうしたデータを
見るともっと患者さんに勧めるべきなのでしょうね。
Sleep apnea and 20-year follow-up for all-cause mortality, stroke, and cancer incidence
and mortality in the Busselton Health Study cohort.
Marshall NS, Wong KK, Cullen SR, Knuiman MW, Grunstein RR
J Clin Sleep Med 10:355-362、2014
SASの簡易検査を1990年に行った地域住民397名を20年フォローしたところ、死亡77名 心血管
疾患発症103名、癌発症125名であり、中等症以上のSASでは全死亡4.2倍 癌死3.4倍 癌罹
患2.5倍 脳血管障害3.7倍と有意に多かった。心血管疾患の死亡と罹患では有意差は出なか
った
オーストラリアで行われたSASの予後調査ですが、注目すべき点は、癌の発症と癌による死亡
率がSASで高く、動脈硬化性疾患を上回ったことです。予想外の結果だけに信憑性は高いと
思います。SASと癌の関係は今後の更なる研究が待たれますね。
26年10月 更新
Effect of CPAP on blood pressure in patients with obstructive sleep apnea and resistant
hypertension: the HIPARCO randomized clinical trial.
Martinez-Garcia MA, Capote F, Campos-Rodr?iuez F, Lloberes P, Diaz de Atauri MJ,
Somoza M, Masa JF, Gonzilez M, Sacristin L, Barbe F, Duran-Cantolla J, Aizpuru F, Manas
E, Barreiro B, Mosteiro M, Cebrian JJ, de la Pena M, Garcia-Rio F, Maimo A, Zapater J,
Hernandez C, Grau SanMarti N, Montserrat JM, Spanish Sleep Network
JAMA 310:2407-15, 2013
194名の難治性高血圧合併OSASに3ヶ月CPAPをすると、コントロールに比べてCPAP群でABPM
でMBPが3.1、DBPが3.2、SBP3.1mmHg低下し MBPとDBPは有意差があり、Dipper群も有意に
増加した。
以前から同様の報告はありますが、CPAPは血圧を下げる効果はありますが、平均にすると3mmHg 程度ですね。
Continuous positive airway pressure treatment improves cardiovascular outcomes in elderly
patients with cardiovascular disease and obstructive sleep apnea.
Nishihata Y, Takata Y, Usui Y, Kato K, Yamaguchi T, Shiina K, Yamashina A
Heart Vessels
65-86歳のCVDで入院歴のあるAHI15以上のOSAS130名をCPAPの有無で2群に分けた
retrospective studyで33カ月のフォロー中に28例が死亡もしくは入院し、非CPAP群はCPAP群
にくらべて5.1倍リスクが高かった。
東京医大からのご報告ですね。非常に大きな差が出ていますね。
Treatment of obstructive sleep apnea syndrome with nasal positive airway pressure
improves golf performance.
Benton ML, Friedman NS
J Clin Sleep Med. 9:1237-42. 2013
12名の新たにCPAPを開始したOSASでCPAP開始前後のゴルフのハンディキャップ等を比較、
CPAP群でハンディキャップは平均11%改善し、特にハンディキャップ12以下のゴルファーで平均32%と
改善が著明であった
国内では力士のデータで戦績が良くなったというデータを見たことがありますが、ゴルフのスコアもよくなるんですね。
26年9月 更新
Obstructive sleep apnea syndrome affects liver histology and inflammatory cell activation in
pediatric nonalcoholic fatty liver disease, regardless of obesity/insulin resistance.
Nobili V, Cutrera R, Liccardo D, Pavone M, Devito R, Giorgio V, Verrillo E, Baviera G, Musso
G Am J Respir Crit Care Med 189:66-76, 2014
平均年齢11.7歳の肝生検をした65名のNAFLD(内55%がNASH)小児で、SASは60%に見ら
れ、肥満やインシュリン抵抗性とは独立にNASHにおいて4.9倍多く見られた。
小児のNASH症例においてSASが高率に見られる事を示した研究です。直接の因果関係は不
明ですが、オッズ比の高さからSASが原因か増悪要因になっているのでしょうね。
Nocturnal continuous positive airway pressure in severe non-apneic asthma. A pilot study.
D'Amato M, Stanziola AA, de Laurentiis G, Diana R, Russo C, Maniscalco M, D'Amato G,
Sofia M
Clin Respir J 2013
10名の無呼吸のない喘息患者に7日間オートCPAPを施行したら、ピークフローの変動率が低下、モーニングディップが減少した。
喘息がCPAPの新たな使用分野となるのでしょうか。今後の展開が楽しみですね。
26年8月 更新 (NEJMから4つ気になる論文がでましたので特集です。)
A randomized trial of adenotonsillectomy for childhood sleep apnea.
Marcus CL, Moore RH, Rosen CL, Giordani B, Garetz SL, Taylor HG, Mitchell RB, Amin R,
Katz ES, Arens R, Paruthi S, Muzumdar H, Gozal D, Thomas NH, Ware J, Beebe D, Snyder
K, Elden L, Sprecher RC, Willging P, Jones D, Bent JP, Hoban T, Chervin RD, Ellenberg SS,
Redline S; Childhood Adenotonsillectomy Trial (CHAT).
N Engl J Med. 20;368:2366-76, 2013
5-9歳の非重症のOSAS児464名をアデノイド扁桃摘出術群と注意深い観察群に分けたRCT、7
カ月後の発達の神経心理学的評価には差がなかったが、親と教師が評価する行動、QOL、
PSGでのAHIは手術群で改善した。
微妙な結果ですが、観察群でも46%の患児は7カ月後に正常化(AHI2以下)している、AHI5以
下の群では65%の患児が正常化しているとデータの方に注目してしまいますね。
Upper-airway stimulation for obstructive sleep apnea.
Strollo PJ Jr1, Soose RJ, Maurer JT, de Vries N, Cornelius J, Froymovich O, Hanson RD,
Padhya TA, Steward DL, Gillespie MB, Woodson BT, Van de Heyning PH, Goetting MG,
Vanderveken OM, Feldman N, Knaack L, Strohl KP; STAR Trial Group.
N Engl J Med. 370:139-49.,2014
AHI20-50のCPAPが継続できないOSAS126名に舌下神経刺激 (肋間筋に換気努力検出センサ
ー、鎖骨下に装置植え込み)を1年施行し、AHI32.→15(中間値29.3→9.0) 4%ODI28.9→13.9
(中間値25.4→7.4)と有意に減少、自覚症状も改善した。再手術は2名に必要も他に重篤な副
作用なし。
Inspire Medical Systemから欧州では販売されている呼吸デマンドタイプの植え込み型上気道
刺激装置の治験データ(STAR試験)の結果です。手術が必要な植え込み型は日本では心理
的な敷居が高いとは思いますが、将来的にはある程度普及するのでしょうか。
CPAP, weight loss, or both for obstructive sleep apnea.
Chirinos JA1, Gurubhagavatula I, Teff K, Rader DJ, Wadden TA, Townsend R, Foster GD,
Maislin G, Saif H, Broderick P, Chittams J, Hanlon AL, Pack AI.
N Engl J Med. 12;370:2265-75,2014
181名のCRP1以上の未治療肥満中等症以上のOSASをCPAP治療、減量、併用治療の3群に
分けたRCTで、8週間後のCRPは 減量群と併用群で低下していたがCPAP群との有意差な
し、インシュリン感受性とTGは減量の効果あり、血圧はいずれの群でもプロトコールを完遂した群で特
に低下した。
OSAS治療で得られる炎症(CRP) 、糖尿、脂質、血圧の改善がCPAP治療自体の効果か、減
量自体の効果か、をRCTでITT解析したら、血圧以外はCPAP自体の効果はなく、糖尿と脂質
は減量の効果だと解釈するのでしょうね。食事指導で平均7kg減量するとCPAPと同等かそれ
以上の効果があるんですね。
CPAP versus oxygen in obstructive sleep apnea.
Gottlieb DJ1, Punjabi NM, Mehra R, Patel SR, Quan SF, Babineau DC, Tracy RP,
Rueschman M, Blumenthal RS, Lewis EF, Bhatt DL, Redline S.
N Engl J Med. 370:2276-85,2014
心疾患or複数の心危険因子をもつ318名のAHI15-50のOSAS患者を睡眠教育群、CPAP群、
酸素群に分けたRCTで3カ月後の24hMBPは酸素群88.6→90.2 教育群87.7→89.0に対して
CPAP群で89.5→87.8と有意に低下した。
従来言われていたCPAPの降圧作用をRCTで示してNEJMに載った仕事ですが、以前と同様に
降圧剤が入った症例とはいえ、血圧低下は2mmHg程度ですね。
26年8月 更新
Mean tracheal sound energy during sleep is related to daytime blood pressure.
Nakano H, Hirayama K, Sadamitsu Y, Shin S, Iwanaga T
Sleep 36:1361-7,2013
SASを疑いPSGを施行した1118症例で、いびきの音の大きさと昼の高血圧には関連があり、こ
の関連は無呼吸がない非肥満症例232例でも同様に認められた。
有意の無呼吸までいかないいびき症でも高血圧との関連がありそうとの報告ですね。中野先
生は長年いびきの音の研究を続けられ、着実に成果を発表されていて尊敬しています。
Symptoms of sleep disordered breathing and risk of cancer: a prospective cohort study.
Christensen AS, Clark A, Salo P, Nymann P, Lange P, Prescott E, Rod NH
Sleep. 36:1429-35, 2013
8,783名の癌罹患歴のない疫学調査で、1991-93年のいびきと呼吸停止のアンケートと一部の症
例の1998年のESSと、2009年までの癌の新規発症には有意の関連はなかった。ただ、50歳以
下の眠気が強い群では4.09倍癌の発症が多かった。
無呼吸と癌発症の関連を示唆する論文が最近続いています。コペンハーゲンで行われた今回
の研究では全体では有意差はでなかったものの、一部の群では4倍という非常に高い癌の発
症が見られていますので、やはりSASと癌には何らかの関連はありそうですね。
Impact of treatment with continuous positive airway pressure (CPAP) on weight in
obstructive sleep apnea.
Quan SF, Budhiraja R, Clarke DP, Goodwin JL, Gottlieb DJ, Nichols DA, Simon RD, Smith
TW, Walsh JK, Kushida CA J Clin Sleep Med 9:989-93, 2013
AHI10以上のOSAS812名でCPAP or shamCPAP 6カ月前後の体重は、shamCPAP群で0.7kg
減少したのにCPAP群で0.35kg増加し、特に使用率がいい群で1.0kgと最も増加していた。
APPLES試験のサブ解析です。以前から議論のあったCPAPと体重変化ですが、今回はCPAP
は体重を増やすとの結論です。無呼吸中のあの努力呼吸を見ているとエネルギーを消費して
るなと思いますので、今回の結論が正しいのでしょうね。
26年6月 更新
Long-term continuous positive airway pressure therapy normalizes high exhaled nitric oxide
levels in obstructive sleep apnea.
Chua AP, Aboussouan LS, Minai OA, Paschke K, Laskowski D, Dweik RA
J Clin Sleep Med 9:529-35, 2013
OSAS75名と健常者29名で呼気中NO測定。OSASで有意にFENO高く(13.4±6.5 vs. 6.5±3.
5) 、特に起床後 (19.0±7.7 vs. 6.9±3.7)にOSASでFENOが上昇、AHIとFENOは相関し、CPAP
後FENOは11.7±4.4と有意に低下した。
無呼吸により上気道の炎症がおこり、CPAPにて改善することを示したデータですが、呼気NO
濃度の絶対値が低いのが気になりますね。
Efficacy and safety of adjunctive modafinil treatment on residual excessive daytime
sleepiness among nasal continuous positive airway pressure-treated japanese patients with
obstructive sleep apnea syndrome: a double-blind placebo-controlled study.
Inoue Y, Takasaki Y, Yamashiro Y J Clin Sleep Med 9:751-7, 2013;
CPAPでもESS11以上の眠気が残るOSAS患者52名にモダフィニル200mg投与。プラセボに比べて
有意にESS低下、MWTでの睡眠潜時延長がみられ、副作用には有意差はなかった。
国内でも保険適応となったのですが、様々な保険上の制約があったり、ナルコレプシー等への効果
とは違う印象があったりで普及はなかなか難しいでしょうか。
26年4月 更新
Flexible positive airway pressure improves treatment adherence compared with auto-
adjusting PAP.
Chihara Y, Tsuboi T, Hitomi T, Azuma M, Murase K, Toyama Y, Harada Y, Aihara K, Tanizawa
K, Handa T, Yoshimura C, Oga T, Yamamoto K, Mishima M, Chin K Sleep
新規にAutoCPAPを導入したOSAS93名で、導入3ヶ月での平均使用時間はC-Flex群が5.19
時間とA-Flex群4.27時間、Flex(-)群3.96時間に比べてアドヒアランスが良好で、その後にFlex(-)で
コンプライアンスが低かった群をA-Flexに変更したらアドヒアランスが改善した、
京都大学からの日本のデータですね。従来は有効とのデータが乏しかったFlex機構ですが、今
回は有効とのデータですね。
The Epworth Sleepiness Scale: conventional self vs physician administration.
Damiani MF, Quaranta VN, Falcone VA, Gadaleta F, Maiellari M, Ranieri T, Fanfulla F,
Carrat? P, Resta O Chest
225名のSAS疑いの患者さんで、通常の患者さん記入ESSと医師記入ESSの2群では、医師記
入ESSが点数が高く(12.1vs10.4)かつAHIやODIとの相関が高かった。
ESSとSASの重症度の相関が良くないのは、患者さんの自己記入だからという面があるのです
ね。納得できる結果ですね。
Primary care vs specialist sleep center management of obstructive sleep apnea and
daytime sleepiness and quality of life: a randomized trial.
Chai-Coetzer CL, Antic NA, Rowland LS, Reed RL, Esterman A, Catcheside PG, Eckermann
S, Vowles N, Williams H, Dunn S, McEvoy RD JAMA 309:997-1004、2013
155名のOSASの患者さんの治療を非専門医と専門医で比較すると、ESSの改善に有意差な
く、自覚症状や満足度、CPAPアドヒアランス、医療コストも同等であった。
オーストラリアからの報告ですが、日本でのCPAPの継続率等のデータとは少し異なった印象
を受けます。国民性の違いでしょうか。
25年12月 更新
Toyama Y, Chin K, Chihara Y, Takegami M, Takahashi K, Sumi K, Nakamura T, Nakayama-
Ashida Y, Minami I, Horita S, Oka Y, Wakamura T, Fukuhara S, Mishima M, Kadotani H
Chest Association between sleep apnea, sleep duration, and serum lipid profile in an urban, male,
working population in Japan.
275名の男性職員のRDI(簡易モニター) 睡眠時間(アクチグラフ) 脂質の相関を検討。RDIとTG、(短
い)睡眠時間とLDL-C (高値)が多変量解析でも有意な関係が得られた。
京都大学からの日本のデータです。脂質代謝にも、睡眠の質と量が関与している可能性を示
唆する結果でしょうか。
Yamauchi M, Jacono FJ, Fujita Y, Yoshikawa M, Ohnishi Y, Nakano H, Campanaro CK,
Loparo KA, Strohl KP, Kimura H
Sleep Breath Breathing irregularity during wakefulness associates with CPAP acceptance in sleep apnea.
明らかな副作用がなかったのにCPAPが継続できなかった27名の覚醒時の呼吸をCPAP継続
可能な21名と比較。覚醒時の一回換気量の変動や呼吸の不安定性がCPAP継続不能群で有意に高かった。
奈良医大からの報告です。面白い切り口ですね。今後の研究の進展が楽しみです。
25年11月 更新
Dixon JB, Schachter LM, O'Brien PE, Jones K, Grima M, Lambert G, Brown W, Bailey M,
Naughton MT JAMA
Surgical vs conventional therapy for weight loss treatment of obstructive sleep apnea: a
randomized controlled trial.
AHI20以上、BMI35以上のOSAに腹腔鏡下胃バンディング術と内科的な減量治療を各30名づつ
行った。2年後手術群と内科治療群で、体重減少は各々27.8(135→107)kg、5.1(126→121)kgで
有意差があったが、AHI減少は各々25.5(65.0→39.5)、14.0(57.2→43.2)と有意差なかった。
減量だけで、重症群をCPAP治療が必要ないほどに改善させることは、手術でも内科治療でも
難しいという事でしょうね。治療法による違いはnの問題の様な気がしますが。。。
Martinez-Garcia MA, Campos-Rodr?guez F, Catal?n-Serra P, Soler-Catalu?a JJ, Almeida-
Gonzalez C, De la Cruz Mor?n I, Dur?n-Cantolla J, Montserrat JM
Am J Respir Crit Care Med
Cardiovascular mortality in obstructive sleep apnea in the elderly: role of long-term
continuous positive airway pressure treatment: a prospective observational study.
65歳以上の939名で心血管系疾患での死亡を前向きに69カ月検討。AHI15以下をコントロールに
すると、ハザード比は未治療重症OSASで2.25、治療重症OSASで0.93、軽~中等症OSASで1.38
であった。
心血管系疾患におけるOSASの重要性とCPAPの効果が高齢者でも従来の報告とほぼ同様に
確認されたという事ですね。
25年10月 更新
Weaver TE, Mancini C, Maislin G, Cater J, Staley B, Landis JR, Ferguson KA, George CF,
Schulman DA, Greenberg H, Rapoport DM, Walsleben JA, Lee-Chiong T, Gurubhagavatula I,
Kuna ST
Am J Respir Crit Care Med
Continuous positive airway pressure treatment of sleepy patients with milder obstructive
sleep apnea: results of the CPAP Apnea Trial North American Program (CATNAP)
randomized clinical trial.
AHI5-30の軽症中等症OSASでESS11点以上の眠気がある症例に8週間のshamCPAPと
CPAPをした。CPAPにて質問紙法による睡眠は改善した。
AHI30以下の症例には、動脈硬化性疾患の合併に対してではなく、日中傾眠が治療の主なタ
ーゲットになりますので、日中傾眠を軽減させるという報告はその治療の裏付けになりますね。
Franklin KA, Sahlin C, Stenlund H, Lindberg E
Eur Respir J
Sleep apnoea is a common occurrence in females.
20-70歳の400人の女性住民にPSGを施行。AHI5以上は50%にみられた。無呼吸は高齢、肥
満、高血圧の合併と関連し、AHI30以上は55-70歳の14%に、BMI30以上の55-70歳の31%に
みられたが、日中の眠気との相関はなかった。
女性の疫学的研究は、最近、やっと増えてきましたが、成人女性の半数もいるのでしょうか。
25年4月 更新
Tahrani AA, Ali A, Raymond NT, Begum S, Dubb K, Mughal S, Jose B, Piya MK, Barnett AH,
Stevens MJ
Obstructive sleep apnea and diabetic neuropathy: a novel association in patients with type
2 diabetes.
Am J Respir Crit Care Med
2型糖尿病234名で簡易モニター施行し65%がOSAS。糖尿病性神経障害はOSAS群で60%にみ
られ、非OSAS群の27%に比べ高く、他の因子調整後も有意だった。
糖尿病とOSASの関連は微妙な報告が多いですが、OSASがあると神経障害は起こりやすいと
いう論文でした。
25年3月 更新
Hoyos CM, Killick R, Yee BJ, Phillips CL, Grunstein RR, Liu PY
Cardiometabolic changes after continuous positive airway pressure for obstructive sleep
apnoea: a randomised sham-controlled study.
Thorax
65名の新規CPAP導入患者(平均49歳 AHI40 BMI31)を2群に分け12週間通常のCPAPと疑
似CPAPを施行したが、内蔵脂肪量、インシュリン感受性、肝脂肪、レプチン、アヂポネクチンには有意
差はなかった。
以前のEur Respir Jの論文でも同様の結果でしたね。CPAPだけでは内臓脂肪は減らないとい
う事でしょうか。
Mwenge GB, Rombaux P, Dury M, Lengel? B, Rodenstein D
Targeted hypoglossal neurostimulation for obstructive sleep apnoea: a 1-year pilot study.
Eur Respir J
13名のOSAS患者に舌下神経刺激装置(aura6000)を植え込み1年間治療したところ、AHI:45
→21 ODI:29→15 覚醒指数:37→25 ESS:11→8に改善した。
1年間継続使用出来るんですね。OAと同様の治療効果が得られていますね。
Marin JM, Agusti A, Villar I, Forner M, Nieto D, Carrizo SJ, Barb? F, Vicente E, Wei Y, Nieto
FJ, Jelic S
Association between treated and untreated obstructive sleep apnea and risk of
hypertension.
JAMA
睡眠検査を施行して高血圧がなかった1889名を12年フォローしたら705名が高血圧を発症し
た。高血圧の発症率は、無呼吸がなかった群 2.19(100人・年あたり) CPAP適応外OSAS群 3.
34 CPAP拒否OSAS群 5.84 CPAP非装着OSAS群 5.12 CPAP治療OSAS群 3.06だった
スぺインからの報告です。高血圧の発症率が無呼吸があると高く、CPAP装着で低下する事を
きれいに示していますね。
Barb? F, Dur?n-Cantolla J, S?nchez-de-la-Torre M, Mart?nez-Alonso M, Carmona C,
Barcel? A, Chiner E, Masa JF, Gonzalez M, Mar?n JM, Garcia-Rio F, Diaz de Atauri J, Ter?n
J, Mayos M, de la Pe?a M, Monasterio C, del Campo F, Montserrat JM, Spanish Sleep And
Breathing Network
Effect of continuous positive airway pressure on the incidence of hypertension and
cardiovascular events in nonsleepy patients with obstructive sleep apnea: a randomized
controlled trial.
JAMA
AHI20以上 ESS10以下の723名のOSASを4年間フォロー。357名のCPAP群と366名の非
CPAP群で高血圧と心血管エベントの発症率はCPAP群9.2 非CPAP群11.0と有意差がでなか
った.。
眠気がない症例だけを選んだので出た結果でしょうね。眠気がある症例では有意差が出るん
でしょうね。
Nieto FJ, Peppard PE, Young T, Finn L, Hla KM, Farr? R
Sleep-disordered breathing and cancer mortality: results from the Wisconsin Sleep Cohort
Study.
Am J Respir Crit Care Med
Wisconsin研究参加1522名のがん死亡率は無呼吸がない群に比べて軽症群1.1倍 中等症群
2.0倍 重症群4.8倍と重症度に応じて高くなった。
低酸素を介して無呼吸は癌による死亡を多くするんでしょうね。非常に大きな有意差が出てい
ますが、ここまでで違いますかね?
25年1月 更新 またまたしばらくサボってしまいました
Lindberg E, Theorell-Hagl?w J, Svensson M, Gislason T, Berne C, Janson C
Sleep apnea and glucose metabolism - a long-term follow-up in a community-based sample.
Chest. 2012 Apr 12
糖尿病でない141名の男性(平均年齢57.5歳 AHI4.7)を11年4カ月フォローしたところ、23名が
糖尿病を発症した。ODI5以上がOR4.4で有意に糖尿病発症の危険因子だった。HOMA-IRの
低下はAHIやODIと相関があった。
OSASが糖尿病の発症の危険因子となるのか、まだ明らかにされていません。今後、このよう
なデータが積み重なって結論が出てくるのでしょう。
Ebben MR, Oyegbile T, Pollak CP
The efficacy of three different mask styles on a PAP titration night.
Sleep Med 2012 ; 13:645-9
55名のOSAS症例で、ピロータイプ、通常の鼻マスク、口鼻マスクの3種類のマスクを用いてCPAP
titrationを施行した。ピロータイプと鼻マスク間に有意差は見られなかったが、口鼻マスクでは有意に
高い圧(中等症OSASで2.8cmH2O,重症OSASで6.0cmH2O)が必要であった。
実感として感じていた事を論文の形で示してくれましたが、固定圧でCPAPをしている方では鼻
マスクから口鼻マスクに変更する場合には、CPAP圧を3~6cmH2Oあげる必要があるのですね。
24年9月 更新
Berry RB, Kushida CA, Kryger MH, Soto-Calderon H, Staley B, Kuna ST.
Respiratory event detection by a positive airway pressure device.
Sleep. 2012 Mar 1;35(3):361-7.
CPAP下PSG148回の記録で、CPAP機器(レムスタ-Mシリーズ)のAHIとマニュアル解析(2007AASM推
奨ルール)のAHIを比較。一部のPSGでは至適圧の1/2圧でCPAP施行。機器は軽症例ではAHI
を高く、重症例ではAHIを低くだす傾向にあった。平均AHIは機器5.8 マニュアル解析5.6と変わら
ず。イベント毎の比較では機器のデータはマニュアル解析に比べて特異度は0.98と高かったが感度
は0.58と低かった。
Thornton AT, Singh P, Ruehland WR, Rochford PD.
AASM criteria for scoring respiratory events: interaction between apnea sensor and
hypopnea definition.
Sleep. 2012 Mar 1;35(3):425-32.
164例のPSG記録で、温度センサーなしで解析した場合を2007AASMルール(推奨と代替)と比較。
圧センセーでAIを判定した場合はAIは51%多く判定された。圧センセーのみでAHIを判定すると推奨
ルールで判定したAHIに比べて15%AHIが多く、代替ルールで判定したAHIに比べて3%AHIが多い
だけでほぼ同様の結果だった。
2007年AASMルールを基準に、オートCPAPの機器のデータ、サーミスタによる気流測定がない
場合のデータを比較した仕事が同じ号のSleepに載っていました。どちらも文章でまとめにくい
のですが、個々のデータで見るとCPAP機器のデータは、臨床的には使用するのにはばらつき
が大き過ぎると感じました。
24年8月 また更新しばらくお休みしてしまいました。24年1月までの分です。
Campos-Rodriguez F, Martinez-Garcia MA, de la Cruz-Moron I, Almeida-Gonzalez C,
Catalan-Serra P, Montserrat JM
Cardiovascular mortality in women with obstructive sleep apnea with or without continuous
positive airway pressure treatment: a cohort study.
Ann Intern Med
PSG検査を受けた1116名の女性を6年間フォローし、心血管疾患による死亡率を比較。AHI10
以下の群と比べて、未治療軽中等症OSA群は1.6倍、未治療重症OSA群は3.5倍死亡率が高
く、CPAP治療を受けると各重症度群の死亡率はコントロール群に比べて0.19倍 0.55倍であっ
た。
従来のデータがほとんど男性のデータでした。女性でOSASが生命予後に関連し、CPAP治療
が有効との報告で、スペインは労力のかかるこのような報告が多いですね。、
Sivam S, Phillips CL, Trenell MI, Yee BJ, Liu PY, Wong KK, Grunstein RR
Effects of 8 weeks of CPAP on abdominal adiposity in obstructive sleep apnoea.
Eur Respir J
38名のOSASで、2か月間のCPAPとshamCPAPを施行。MRIで求めた皮下脂肪、内臓脂肪の
低下にはCPAPとshamCPAP間で有意差が見られなかった。血糖や肝機能にも有意差がでな
かった。
2か月だから有意差がでないのでしょうか。症例数の問題でしょうか。内臓脂肪は減ってくれる
はずと期待しているのですが。。。
24年4月 更新
Pedrosa RP, Drager LF, Gonzaga CC, Sousa MG, de Paula LK, Amaro AC, Amodeo C,
Bortolotto LA, Krieger EM, Bradley TD, Lorenzi-Filho G
Obstructive sleep apnea: the most common secondary cause of hypertension associated
with resistant hypertension.
Hypertension
125名の治療抵抗性高血圧患者で、二次性高血圧の原因を調べたところ、64%にAHI15以上
のOSASが見つかり、原発性アルドステロン症(5.6%)、腎動脈狭窄(2.4%)等と比べて頻度が
高かった。
一般人におけるOSASの頻度から予想される結果ではありますが、高血圧診療におけるOSAS
の重要性を再認識させる結果ですね。
Denotti AL, Wong KK, Dungan GC 2nd, Gilholme JW, Marshall NS, Grunstein RR
Residual sleep disordered breathing during auto-titrating positive airway pressure therapy.
Eur Respir J
中等症から重症のOSAS34名でオートCPAP下のPSG検査を施行。PSGのマスクフローから求
めたAHIは、機器のフローから求めたAHIとの一致率は高かったが、機器のレポートのAHIとの
一致率は低かった。オートモードCPAPでは、PSGから求めたAHIで10以上のOSAが24%の患
者で残り、無呼吸の検知障害と反応障害の両方がみられた。
数値データで示されるとつい信用してしまいがちですが、CPAP機器のAHIはあくまで参考値で
ある事を忘れてはいけませんね。
Sharma SK, Agrawal S, Damodaran D, Sreenivas V, Kadhiravan T, Lakshmy R, Jagia P,
Kumar A
CPAP for the metabolic syndrome in patients with obstructive sleep apnea.
N Engl J Med 365:2277-2286
86名のOSA患者にCPAPと偽CPAPを各々3カ月施行。偽CPAPに比べてCPAPでは SBPが3.
9mmHg 、DBPが2.5mmHg、LDLCが9.6mg/dl、TGが18.7mg/dl、HbA1cが0.2%有意に低下し
た。CPAPによってメタボリック症候群患者の13%が診断基準外になった。
インドからの報告がNEJMに載りましたね。予想された結果ではありますが、偽CPAPもしっか
りとした研究デザインが評価されてのNEJM掲載ですかね。
24年3月 更新
しばらくお休みしていていましたが、ぼちぼち再開し追いつこうと思います。23年9月分です。
Redolfi S, Arnulf I, Pottier M, Lajou J, Koskas I, Bradley TD, Similowski T
Attenuation of Obstructive Sleep Apnea by Compression Stockings in Subjects With Venous
Insufficiency.
Am J Respir Crit Care Med 2011 Aug 11;
12名の慢性静脈不全を伴うOSA患者に弾性ストッキングを一週間日中装着してもらうと、下肢水
分量が62%減少し、首周囲径の増加が60%抑制され、AHIが48.4→31.3と36%低下した。
一週間の弾性ストッキングだけで、AHIが1/3下がりますか。試みてみたい気にさせますね。
Kashine S, Kishida K, Funahashi T, Yasuda T, Okita K, Matsuzawa Y, Shimomura I
Selective contribution of waist circumference reduction on the improvement of sleep-
disordered breathing in patients hospitalized with type 2 diabetes mellitus.
Intern Med 50: 1895-1903, 2011
40名の2型糖尿病患者さんの2-3週間の教育入院の前後で簡易検査を施行。AHI25.6→21.1
体重76.4→73.8㎏ ウエスト97.5→95.6㎝ 1,5A-G 5.9→8.3と変化したが、AHIの変化はウエストの
変化とのみ相関し、体重と1,5A-Gとは相関しなかった。
阪大からの報告です。AHIの変化は大きくはありませんが、こちらは前の報告とは異なりむくみ
より内臓脂肪の変化との関連を示唆するデータでしょうか。
23年8月 更新
Bakker JP, Neill AM, Campbell AJ.
Nasal versus oronasal continuous positive airway pressure masks for obstructive sleep
apnea: a pilot investigation of pressure requirement, residual disease, and leak.
Sleep Breath. 2011 Jul 29
12名のOSAS患者さん(AHI59.8 CPAP圧11.1cm)に2-3日づつ 鼻マスク1種と口鼻マスク2種
をオートモードと固定圧で使用し比較。オートモードでのCPAP圧はいずれのマスクでも有意差
なく、固定圧CPAPでのAHIとリーク量は鼻マスクの方が有意に小さかった。
有意差は出ましたが、臨床的には意味のない程度のAHIとリークですね。
23年7月 更新
Ozeke O, Erturk O, Gungor M, Hizel SB, Aydin D, Celenk MK, Dincer H, Il?c?n G, Ozgen F,
Ozer C.
Influence of the right- versus left-sided sleeping position on the apnea-hypopnea index in
patients with sleep apnea.
Sleep Breath. 2011 Jun 16
131名のOSASで体位別のAHIを比較したところ、仰臥位、左側臥位、右側臥位で、それぞれ
60.4±36.2、30.2±32.6、 23.6±30.1で、左側臥位の方が右側臥位より有意にAHIが高く、中等
症と重症のOSASで有意な結果が得られた。
側臥位で、左右の違いは本当に意味があるのでしょうか?
Aron-Wisnewsky J, Minville C, Tordjman J, Levy P, Bouillot JL, Basdevant A, Bedossa P,
Clement K, Pepin JL.
Chronic intermittent hypoxia is a major trigger for non-alcoholic fatty liver disease in
morbid obese.
J Hepatol. 2011 May 19;
101名の肥満患者で肝臓の針生検とODIを測定。ODIが高い症例で他の因子(年齢、肥満度、
インシュリン抵抗性)を補正した後でも、非アルコール性脂肪性肝疾患の活動性が高く、線維
化も進行していた。
OSASとNASHの関連性を示した論文ですが、当院の患者さんでもOSASがNASH発症に関与し
ている印象は強いです。
23年6月 更新
Kato M, Kumagai T, Naito R, Maeno KI, Kasagi S, Kawana F, Ishiwata S, Narui K, Kasai T.
Change in cardio-ankle vascular index by long-term continuous positive airway pressure
therapy for obstructive sleep apnea.
J Cardiol. 2011 May 25;
中等症以上のOSAS30名でCPAP前と1カ月後、1年後のCAVIを比較。1カ月後に有意に低下し
たCAVIは1年後は上昇しCPAP前と有意差なしになった。1カ月後のCAVI低下はCPAP使用率
と相関があった。
虎の門病院からの報告です。もう少し症例が集まってくれば1年後も有意差保てるのでしょう
か。
23年5月 更新
Akinnusi M, Laporta R, El-Solh AA.
LECTIN-LIKE OXIDIZED LDL RECEPTOR-1 MODULATES ENDOTHELIAL APOPTOSIS IN
OBSTRUCTIVE SLEEP APNEA.
Chest. 2011 May 12;
38名の新規診断OSASでは、動脈硬化病変で強く発現されアポトーシスに関連する酸化LDL
受容体LOX-1が、健常人に比べて約3倍高く、コンプライアンス良好なCPAP治療で低下した。
Yoshihisa A, Owada T, Hoshino Y, Miyata M, Misaka T, Sato T, Suzuki S, Sakamoto N,
Sugimoto K, Kunii H, Nakazato K, Suzuki H, Saitoh S, Ishibashi T, Takeishi Y.
Flow-mediated dilatation identifies impaired endothelial function in patients with sleep apnea
syndrome.
Fukushima J Med Sci. 2010 Dec; 56(2):115-20.
中等症以上のSAS93名と軽症SAS36名で、心エコー所見は有意差がなかったが、血管内皮の
機能を反映する前腕動脈の血流遮断前と血流再開後の上腕動脈径の変化率(FMD)は中等
症以上群で有意に低かった(3.5vs7.8)
OSASでの血管内皮に関する論文2つです。OSASで心筋梗塞などが増加するメカニズムとし
て、無呼吸が直接血管に影響を与えている可能性を示唆するのでしょうね。
23年4月 更新
大嶋康義 梶原大季 酒井邦彦 杵淵進一 松本尚也 桑原克弘 宮尾浩美 斉藤泰晴 大
平徹郎 中山秀章
SAS患者の予後とCPAPアドヒアランスの関係
日本呼吸器学会雑誌 49 第51回日本呼吸器学会学術講演会プログラム P117
461名のCPAP患者(使用期間 平均2.7年)のうち7名が死亡。他に脳卒中3名 心筋梗塞3名。
CPAP使用率70%以下または使用時間4時間以下では死亡率が有意に高い(OR6.08),50%以
下または使用時間3時間以下ではOR10.68だった。
日本呼吸器学会の演題です。震災の影響で一般演題は紙上のみで詳細はわかりませんが、
以前からとても知りたかった情報です。やはりある程度はCPAPを使用してもらわなければだ
めなのですね。
Steier J, Seymour J, Rafferty GF, Jolley CJ, Solomon E, Luo Y, Man WD, Polkey MI,
Moxham J.
Continuous transcutaneous submental electrical stimulation in obstructive sleep apnea: a
feasibility study.
Chest. 2011 Mar 31;
11名の健康人でおとがい舌筋の体表面刺激をすると舌の断面積が10%増加。11名のOSAS
患者での刺激ではPSGでいびき SpO2が有意に改善し RDIは28.1→10.2に改善。また横隔膜
筋電図と発生圧も有意に減少した。
RDIの変化を見ると、OA並みには効いていますね。これは、イギリスからの報告ですね。
Saruhara H, Takata Y, Usui Y, Shiina K, Hashimura Y, Kato K, Asano K, Kawaguchi S, Obitsu
Y, Shigematsu H, Yamashina A.
Obstructive sleep apnea as a potential risk factor for aortic disease.
Heart Vessels. 2011 Mar 26;
年齢やBMIをそろえた胸部大動脈瘤群(32名)、腹部大動脈瘤群(36名)、大動脈かい離群(27
名) コントロール群(32名)に睡眠検査をしたところ、動脈瘤群で有意にAHI15以上の群が多か
ったが、動脈瘤群の中での群間の差はなかった。
腹部と胸部で差がないという事は、SASの関与は胸腔内圧を介したものではなく、血圧などが
関与しているのでしょうか。
23年3月 更新
Sakaguchi Y, Shoji T, Kawabata H, Niihata K, Suzuki A, Kaneko T, Okada N, Isaka Y, Rakugi
H, Tsubakihara Y.
High Prevalence of Obstructive Sleep Apnea and its Association with Renal Function among
Nondialysis Chronic Kidney Disease Patients in Japan: A Cross-Sectional Study.
Clin J Am Soc Nephrol. 2011 Mar 17;
100人(男性68% 平均66.5歳 BMI23.1 eGFR28.5) の日本人非透析慢性腎疾患患者で簡易
モニターをしたら、65%がOSAで、重症8% 中等症25% 軽症32%だった。eGFRが10低下する
とOSAの率は42%増加し、eGFRとAHIは逆相関関係がみられた。
平均年齢66歳の男性中心のデータですので、非腎疾患でもOSASの頻度は高いとは思います
が、GFRとAHIとに逆相関がありますので、OSASとCKDには関連がありと見ていいのでしょう
ね。
Chami HA, Resnick HE, Quan SF, Gottlieb DJ.
Association of incident cardiovascular disease with progression of sleep-disordered
breathing.
Circulation. 2011 Mar 29; 123(12):1280-6.
心血管障害のない2721名のSHHS研究参加者で5年の間隔をあけて2回PSGを施行。心筋梗
塞、心不全、脳卒中は5年の間に95名に起こり、心血管障害の起こった群で心血管障害が起
こらなかった群より閉塞性無呼吸は1.75/hr、中枢性無呼吸は1.07/hr増加した。
他の危険因子を除いても心血管障害自体が無呼吸(閉塞性、中枢性ともに)の増悪因子になる
という研究ですね。今回解析できなかった共通の因子が関連しているような気もしますが。。。
Aihara K, Oga T, Harada Y, Chihara Y, Handa T, Tanizawa K, Watanabe K, Tsuboi T, Hitomi T,
Mishima M, Chin K.
Comparison of biomarkers of subclinical lung injury in obstructive sleep apnea.
Respir Med. 2011 Mar 12
197人のOSASで、KL-6はAHIと正の相関があったが、SP-DとCRPではAHIとの相関はみられ
なかった。OSASではKL-6は肺機能障害とも関連がみられた。
京都大のデータです。KL-6を増加させるメカニズムはなにか、KL-6の増加が、臨床的に意味
のある変化につながるのか興味ありますね。
23年1月 更新
Dotan Y, Golibroda T, Oliven R, Netzer A, Gaitini L, Toubi A, Oliven A.
Parameters affecting pharyngeal response to genioglossus stimulation in sleep apnoea.
Eur Respir J. 2010 Dec 22; .
14人の麻酔下のOSAS患者で、上気道筋の刺激の効果の差について検討。おとがい舌筋の
前方より後方刺激をした時に刺激効果は強く、舌のサイズと咽頭径が関連していた。
おとがい舌筋刺激の実用化のためにはこのような地道な研究の積み重ねが必要ですね。
Bakker JP, Marshall NS.
Flexible pressure delivery modification of continuous positive airway pressure for
obstructive sleep apnea does not improve compliance with therapy: Systematic review and
meta-analysis.
Chest. 2010 Dec 30
CPAPの呼気早期の圧減少(c-flex, a-flex, EPR)の有効性をメタアナリシスで検討した。CPAPの呼
気早期の圧減少はコンプライアンスの改善につながらず、日中傾眠に関しても有効性はなかった
以前から指摘されていましたが、メタアナリシスでも確認されました。臨床的な実感とも合います
ね。今年でる新型でもまだこの機能は残るようですが、いかがなんでしょうか。
22年12月 更新
Dur?n-Cantolla J, Aizpuru F, Montserrat JM, Ballester E, Ter?n-Santos J,
Aguirregomoscorta JI, Gonzalez M, Lloberes P, Masa JF, De La Pea M, Carrizo S, Mayos M,
Barb F, Spanish Sleep and Breathing Group.
Continuous positive airway pressure as treatment for systemic hypertension in people with
obstructive sleep apnoea: randomised controlled trial.
BMJ. 2010; 341:c5991
340人の新規に診断された高血圧合併OSAS(52.4歳 BMI31.9 AHI43.5)に治療CPAPとsham
CPAPを3カ月施行して、24時間血圧を測定した。治療CPAPで1.5mmHg(SBP2.1mmHg
DBP1.3mmHg)有意に低下した。夜間の低下は2.1mmHgであった。
従来の報告と基本的には同じですが、しっかりとしたスタディデザインでBMJに載っています。
CPAPで血圧は低下するが、その程度はわずかという事ですね。
Giannoni A, Baruah R, Willson K, Mebrate Y, Mayet J, Emdin M, Hughes AD, Manisty CH,
Francis DP.
Real-time dynamic carbon dioxide administration a novel treatment strategy for
stabilization of periodic breathing with potential application to central sleep apnea.
J Am Coll Cardiol. 2010 Nov 23; 56(22):1832-7.
健康ボランティアで周期性呼吸の過呼吸期にCO2投与すると周期性呼吸が減少し、低呼吸期
にCO2投与すると周期性呼吸が増強した。心不全の患者でも同様の結果が得られ、常時2%
CO2でも周期性呼吸が軽減したが、呼吸量の増加が見られた。
理論的には以前から言われていた事と思いますが、実際の症例でも確認したという事ですね。
ASVなどよりも安価でしょうから、今後の発展に期待したいです。
22年11月 更新
Canessa N, Castronovo V, Cappa SF, Aloia MS, Marelli S, Falini A, Alemanno F, Ferini-
Strambi L.
Obstructive Sleep Apnea: Brain Structural Changes and Neurocognitive Function Before
and After Treatment.
Am J Respir Crit Care Med. 2010 Oct 29
17人の未治療OSASと15名の年齢を合わせたコントロール群で神経認知機能と形態を比較。
OSAS群では気分、眠気に加え、認知機能のほとんどで障害がみられ、これらの障害は左海
馬、左後頭頂葉皮質、右上前頭回の灰白質量の減少と関連があった。3か月の治療後、海馬
と前頭葉の灰白質量の増加と平行して記憶や注意力、企画力などの改善がみられた。
OSASによる大脳の機能障害を形態的にも裏付けをした素晴らしい仕事ですね。筆者らも述べ
ているようにOSASの早期診断と治療の重要性を再認識させてくれます。
Sekizuka H, Osada N, Kida K, Yoneyama K, Eguchi Y, Miyake F.
Relationship between chronic kidney disease and sleep blood pressure in patients with sleep
apnea syndrome.
Hypertens Res. 2010 Oct 21
Yamamoto U, Mohri M.
The influence of renal insufficiency on sleep-disordered breathing in patients with
symptomatic chronic heart failure.
Exp Clin Cardiol. 2010; 15(3):33-6
日本からの発表で、SASと腎機能に焦点を当てた仕事2つです。
前者は198名のSAS患者でeGFR60で2群に分け、eGFR60以下の群は高齢で、BMIは低く、睡
眠中の血圧が123/81とeGFR60以上群の117/76より有意に高かった。他の睡眠データ、24時
間血圧、朝の血圧には有意な差はなかった、という報告で、
後者は79名の安定している有症状心不全患者(EF45%以下)にPSG検査をしたところ、軽症
15名、中等症10名、重症14名で、中枢性が優位。重症群のBNP587で他の群より高かった。
eGFRとAHIには相関がみられなかった、という報告です。
どちらの報告でも、SASと腎機能障害の直接の関連は見いだせなかったようですが、何らかの
関連はありそうですので、今後の発展に期待したいです。
22年10月 更新
Kohler M, Smith D, Tippett V, Stradling JR.
Predictors of long-term compliance with continuous positive airway pressure.
Thorax. 2010 Sep; 65(9):829-32.
639名のCPAP使用患者でCPAPの継続率と継続要因を調査。5年、10年での継続率は各々
81%、70%であった。使用者の平均使用時間は6.2時間。CPAP中止に関与する因子はODIの
みが有意で、ODI15以下を基準にすると、15-30の群で0.68、30-60の群で0.37、60以上の群で
0.17であり、ESSや年齢などは独立した因子ではなかった。
CPAP中止の因子の議論はなかなか結論が出ませんね。ODI15以下を基準にすれば上記結
果でしょうが、日本ではAHI20以上しか導入していませんので、この結果を日本にあてはめる
わけにはいかないのでしょうね。
22年9月 更新
Akahoshi T, Uematsu A, Akashiba T, Nagaoka K, Kiyofuji K, Kawahara S, Hattori T, Kaneita
Y, Yoshizawa T, Takahashi N, Uchiyama M, Hashimoto S.
Obstructive sleep apnoea is associated with risk factors comprising the metabolic syndrome.
Respirology. 2010 Aug 16; .
416名のOSASのうち、218名(52%)がメタボリック症候群で、OSASの重症度とメタボリック症候
群の頻度は相関していた。非肥満のOSASで、高血圧、高脂血症、耐糖能障害を有するのは
各々69% 43% 20%であり、非肥満OSASでもこれらの危険因子を有する症例が多かった。
肥満を除いても、OSAでは高血圧、高脂血症、耐糖能障害を有する症例が多いという日本か
らの報告です。高血圧については、OSASが肥満とは独立の危険因子と認められていますが、
高脂血症や糖尿病ではどうなのか、非肥満のOSASが多い日本でさらに検討が進むといいで
すね。
谷川武、櫻井進
睡眠時無呼吸症候群治療中の患者が生命保険に加入する場合の対応に関する検討
日本睡眠学会第35回定期学術集会抄録集 P247
国内の生命保険会社46社にアンケートを送り、24社より以下の回答を得た。
Q1. SASについて保険引き受け基準が規定されているか?
A1. 一般健常者と同様に引き受ける3社、基準がないが同様に引き受ける5社、保険料を変
更して引き受ける8社、未回答8社
Q2 治療中の方が記者の生命保険加入を希望した時の条件は?
A2. 一般健常者と同様に引き受ける10社、保険料を変更して引き受ける7社、引き受けない1
社、未回答6社
学会の抄録ですが、よく患者さんから質問される点ですので、一部を引用させていただきまし
た。今後、少しでも一般健常者と同様に引き受けてもらえる方向に向かうといいですね。
日本人透析患者のRLSにおけるドーパミンアゴニストの薬物血中動態
小池 茂文、田中 春仁、山本 勝徳、井上 雄一、河合 真
日本睡眠学会第35回定期学術集会抄録集 P250
透析患者でpramipexoleの血中濃度は、腎機能正常者の一回投与時の3.5倍、維持料投与時
の8-12倍で、透析による薬剤除去はかなり少ない事が推測された。
やはり、学会の抄録ですが、以前から知りたかった情報なので、一部を引用させていただきま
した。このような発表は即臨床に役立つのでありがたい情報です。
22年8月 更新
Tamura A, Kawano Y, Ando S, Watanabe T, Kadota J.
Association between coronary spastic angina pectoris and obstructive sleep apnea.
J Cardiol. 2010 Jul 12;
42名の冠れん縮性狭心症(アセチルコリン、エルゴノビン負荷で診断)では、中等症以上のOSAが67%
に見られ、コントロール群の20%に比べて有意に多かった。
当院のOSASの患者さんでも冠れん縮性狭心症の患者さんが多い印象あります。どんな機序
なのでしょうか。日本に多い疾患ですので国内でさらに研究を発展させて欲しいです。
Gottlieb DJ, Yenokyan G, Newman AB, O'Connor GT, Punjabi NM, Quan SF, Redline S,
Resnick HE, Tong EK, Diener-West M, Shahar E.
Prospective study of obstructive sleep apnea and incident coronary heart disease and
heart failure: the sleep heart health study.
Circulation. 2010 Jul 27; 122(4):352-60
SHHS研究でPSGをした40歳以上のの4422名で、平均8.7年間に冠動脈疾患、心不全の発症
率を前向き縦断的に調査。70歳以下の男性でのみOSASはAHIが10増加すると冠動脈疾患が
1.1倍になる有意の危険因子となり、AHI30以上の群は、AHI5以下の群に比べて68%冠動脈疾
患になりやすかった。心不全でもOSAはAHIが10増加すると1.13倍になる有意の危険因子とな
り、AHI30以上の群は、AHI5以下の群に比べて58%心不全になりやすかった。
女性と高齢者では有意な結果が出ませんでしたね。今までで最大規模の大規模研究なんです
が、症例数の問題でしょうか。
Mason RH, Ruegg G, Perkins J, Hardinge M, Amann-Vesti B, Senn O, Stradling JR, Kohler M.
Obstructive Sleep Apnea in Patients with Abdominal Aortic Aneurysms: Highly Prevalent
and Associated with Aneurysm Expansion.
Am J Respir Crit Care Med. 2010 Jul 9
127名の腹部大動脈瘤の患者さんに睡眠検査をして、1年半の間の瘤の増大を測定。重症
OSAS群では2.9mm/yと非無呼吸群(1.2mm/y)、軽症OSAS群(1.3mm/y)に比べて有意に大動
脈瘤が大きくなった。
こういった仕事の結果は、腹部大動脈瘤を合併したOSAの患者さんに具体的に危険性を説明
するときに有用ですね。
22年7月 更新
Koutsourelakis I, Vagiakis E, Perraki E, Karatza M, Magkou C, Kopaka M, Roussos C,
Zakynthinos S.
Nasal inflammation in sleep apnoea patients using CPAP and effect of heated humidification.
Eur Respir J. 2010 Jul 1
20人の鼻閉を有するCPAP治療中のOSAS患者に、加温加湿器と非加温加湿器での3週間の
randomized crossover試験。加温加湿器の使用で症状、抵抗、鼻汁中のIL-6、IL-12, TNF-
αの低下、鼻粘膜の炎症細胞と線維化の減少がみられた。
経験的には加温加湿器の有効性はよく知られていましたが、このようなしっかりとした評価を
論文化していただけると患者さんにも自信を持ってお勧めできますね。
Pepin JL, Tamisier R, Barone-Rochette G, Launois SH, Levy P, Baguet JP.
Comparison of Continuous Positive Airway Pressure and Valsartan in Hypertensive Sleep
Apnea Patients.
Am J Respir Crit Care Med. 2010 Jun 3; .
23人の高血圧合併OSAS(平均年齢57才、BMI28 AHI29 血圧155/102)に8週間のCPAPとデ
ィオバン160mg投与でのrandomized crossover試験でABPMを比較。ディオバンでは9.1mmHg血圧
が低下したのに対して、CPAPでは有意な低下ではあるが、2.1mmHg の低下にとどまった。
Lozano L, Tovar JL, Sampol G, Romero O, Jurado MJ, Segarra A, Espinel E, R?os J, Untoria
MD, Lloberes P.
Continuous positive airway pressure treatment in sleep apnea patients with resistant
hypertension: a randomized, controlled trial.
J Hypertens. 2010 Jun 23;
利尿剤を含む十分量の降圧剤を3剤使用しても140/90mmHg以上の高血圧患者で、AHIが15
以上のOSASを合併する症例に、CPAPを3カ月すると5.8時間以上CPAP使用した群では
ABPMのSBPが9.7mmHg、DBPが7.0mmHg低下した。
CPAPのABPMに対する効果の論文が2つありました。結果はかなり違っていますが、対象群
の違いでしょうか。
22年6月 更新
Rosenthal L, Massie CA, Dolan DC, Loomas B, Kram J, Hart RW.
A multicenter, prospective study of a novel nasal EPAP device in the treatment of
obstructive sleep apnea: efficacy and 30-day adherence.
J Clin Sleep Med. 2009 Dec 15; 5(6):532-7.
鼻口に装着した呼気抵抗増大装置を34名のOSAS患者で30日試した。AHIは24.5から13.5
(初日)、15.5(30日目)に減少した。いびきの時間やESS、平均SpO2も有意に改善した。30日
間の自宅使用の94%の日で朝まで機器を装着していた。
無呼吸は吸気の始めに気道が閉塞するので、呼気の抵抗増大はどのようなメカニズムで効い
ているのでしょうか。 簡便そうですので今後の展開が気になります。、
Habukawa M, Uchimura N, Kakuma T, Yamamoto K, Ogi K, Hiejima H, Tomimatsu K,
Matsuyama S.
Effect of CPAP treatment on residual depressive symptoms in patients with major
depression and coexisting sleep apnea: Contribution of daytime sleepiness to residual
depressive symptoms.
Sleep Med. 2010 Jun; 11(6):552-7.
17名の薬物治療中のうつ病とOSASを合併する症例に2カ月のCPAP治療をするとうつ症状も
改善した。Beck Depression Inventory 、Hamilton Rating Scale for Depression の各 スコアは
19.7 → 10.8 と 16.7 → 8.0に変化した。
うつと無呼吸を合併していた場合にその症状がどちらが原因なのかの鑑別は難しいですよ
ね。両方の治療をきちんとするしかないということですね。
22年5月 更新
Yumino D, Redolfi S, Ruttanaumpawan P, Su MC, Smith S, Newton GE, Mak S, Bradley TD.
Nocturnal Rostral Fluid Shift. A Unifying Concept for the Pathogenesis of Obstructive and
Central Sleep Apnea in Men With Heart Failure.
Circulation. 2010 Mar 29
57名の心不全症例でPSG前後で下肢の水分量と頚部径、PSG中の経皮CO2を測定。閉塞優
位群(35例)では下肢の水分量の変化と頚部径、AHIが逆相関関係にあり、中枢型優位群(22
例)では下肢の水分量の減少は頚部径、AHIと逆相関関係にあり、経皮CO2と関連があった。
OSAではCPAPにより頸部周径増大が減少。
心不全においては、夜間臥位になることでの下肢から頭の方への体液シフト、上気道の浮腫
が閉塞性、中枢性両方のSASの原因という論文ですが、無呼吸の結果としての浮腫の可能性
もあり、原因か、結果かはなんとも言えないような。。。。。
Marin JM, Soriano JB, Carrizo SJ, Boldova A, Celli BR.
Outcomes in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease and Obstructive Sleep
Apnea. The Overlap Syndrome.
Am J Respir Crit Care Med. 2010 Apr 8
228人のCPAP治療中のOSA合併COPD、213人のCPAP未治療のOSA合併COPD、210人の
OSAのないCOPDを平均9.4年フォロー。死亡ないしCOPD増悪入院はOSAのないCOPDに比
べてCPAP未治療のOSA合併COPDで有意に多かった(RR1.79)CPAP治療中のOSA合併
COPDでは有意なリスクの増加は見られなかった。
COPDで、OSAを合併すると、未治療では予後が不良で、CPAPをすると予後が改善するとい
報告ですね。まあ、そうですよね。
Bakker J, Campbell A, Neill A.
Randomized controlled trial comparing flexible and continuous positive airway pressure
delivery: effects on compliance, objective and subjective sleepiness and vigilance.
Sleep. 2010 Apr 1; 33(4):523-9
76名の重症OSASに3カ月、ダブルブラインドで、c-flex有無でCPAPを施行。CPAP装着時間、
psychomotor vigilance tasks、日中傾眠、睡眠の質、QOL, treatment comfortのいずれも有意
の差は見られなかった。
当院の c-flexの印象と一致しています。一部の患者さんはいいとおっしゃっていますが、ほと
んどの方には効果ない印象です。
Ueno K, Kasai T, Brewer G, Takaya H, Maeno K, Kasagi S, Kawana F, Ishiwata S, Narui K.
Evaluation of the apnea-hypopnea index determined by the S8 auto-CPAP, a continuous
positive airway pressure device, in patients with obstructive sleep apnea-hypopnea
syndrome.
J Clin Sleep Med. 2010 Apr 15; 6(2):146-51.
70人のOSAS(平均AHI51.9)で、CPAP titration PSG時のPSGのマニュアル解析から求めた
AHIとCPAP機器から求めたAHIを比較した。 マニュアル解析のAHI4.2 +/- 0.4; AI, 1.9 +/- 0.
3; HI, 2.3 +/- 0.3). 機器のAHI 9.9 +/- 0.6 (AI, 2.4 +/- 0.3; HI, 7.5 +/- 0.4)で、AHIとAIには強い
相関があったが、HIでは弱い相関だった。
虎ノ門病院からの報告です。このようなデータは患者さんに説明する時に有用で、利用価値高
いです。AutoCPAPでのRespiroとResmedのAHIデータも低呼吸のデータが両者で大きく異なる
印象ですよね。
Johnson KG, Johnson DC.
Frequency of sleep apnea in stroke and TIA patients: a meta-analysis.
J Clin Sleep Med. 2010 Apr 15; 6(2):131-7.
脳血管障害(TIA含む)における無呼吸の頻度をみたメタアナリシス。29論文の2343名の結果
で、AHI5以上は72% AHI20以上が38%、無呼吸の7%のみが中枢性。脳血管障害のタイプと
発症してからの時間には睡眠呼吸障害の頻度は無関係だった。男性に多く、再発例に多かっ
た。
発症してからの時間は関係ないのでしょうか?急性期に多いのかと思っていたのですが、そう
ではないのですね。
22年4月 更新
Ryan CM, Floras JS, Logan AG, Kimoff RJ, Series F, Morrison D, Ferguson KA, Belenkie I,
Pfeifer M, Fleetham J, Hanly PJ, Smilovitch M, Arzt M, Bradley TD, for the CANPAP
Investigators.
Shift in sleep apnoea type in heart failure patients in the CANPAP trial.
Eur Respir J. 2010 Mar; 35(3):592-597
98名のCANNAPトライアル参加者のうち18名が自然に中枢性優位から閉塞性優位に無呼吸の
タイプが変わっていた。タイプが変わった症例では、LVEFと循環時間の改善が、タイプが変わ
らない症例に比べてが有意であった。
心不全症例が対象であるCANNAPトライアルで、心不全の改善により2割の症例が中枢型優位
から閉塞型優位に変わったという報告ですが、以前から指摘されている心不全症例での中枢
型と閉塞型の比率が報告によって異なることの一つの理由でしょうね。
Kuribayashi S, Kusano M, Kawamura O, Shimoyama Y, Maeda M, Hisada T, Ishizuka T,
Dobashi K, Mori M.
Mechanism of gastroesophageal reflux in patients with obstructive sleep apnea syndrome.
Neurogastroenterol Motil. 2010 Mar 15;
8名の逆流性食道炎を伴うOSA患者、9名の逆流性食道炎を伴なわないOSA患者、8名の健
康対照者で、食道内圧と食道内pHを含むPSGを施行した。睡眠中の胃食道逆流は逆流性食
道炎を伴うOSA患者で有意に多くみられた。OSAの重症度は食道炎の有無で差はなかった。
睡眠中の胃食道逆流は主に一過性の下部食道括約部圧の低下が原因であり、食道内圧の
陰圧が原因ではなかった。
Suzuki M, Saigusa H, Kurogi R, Yamamoto T, Ishiguro T, Yohsizawa T, Kuyama Y, Furukawa T.
Arousals in obstructive sleep apnea patients with laryngopharyngeal and gastroesophageal
reflux.
Sleep Med. 2010 Apr; 11(4):356-60.
OSAS患者で咽頭喉頭部と胃食道の逆流をPSG下にpHモニターで記録した。重症のOSASでは
逆流は無呼吸に伴う覚醒と関連し、軽症から中等症のOSASでは逆流は無呼吸とは無関係な
覚醒や、覚醒とは関連なく起こっていた。
日本からPSG時にpHモニター等を記録したOSASとGERDの関連に関する報告が2つありました。
OSASでGERDが高い頻度で見られ、睡眠中の胃食道逆流が覚醒と関連する事は以前から報
告されていましたが、OSASにみられる睡眠中の胃食道逆流のメカニズムは症例によって異な
り、様々な要因が絡んでいるのでしょうね。
Redline S, Yenokyan G, Gottlieb DJ, Shahar E, O'Connor GT, Resnick HE, Diener-West M,
Sanders MH, Wolf PA, Geraghty EM, Ali T, Lebowitz M, Punjabi NM.
Obstructive Sleep Apnea Hypopnea and Incident Stroke: The Sleep Heart Health Study.
Am J Respir Crit Care Med. 2010 Mar 25; .
5422名のSHHS参加症例を平均8.7年フォローしたところ、193名が脳梗塞を発症した。脳梗塞
とAHIの間には有意の関連がみられ、重症の男性OSASでは2.86倍脳梗塞になりやすく、軽症
から中等症のOSASではAHIが1上がると6%脳梗塞のリスクが高くなった。女性では脳梗塞は
AHIと有意の相関は見られなかったが、重症のOSASでは脳梗塞のリスクが高かった。
従来から報告されてきたOSASと脳梗塞の関連を大規模スタディーで検証した報告ですが、女
性で脳梗塞とAHIに有意な相関がみられなかったのはなぜでしょうか。単に症例数の問題だけ
ではないと思いますが。。。
22年3月 更新
Chan KK, Ing AJ, Laks L, Cossa G, Rogers P, Birring SS.
Chronic cough in patients with sleep-disordered breathing.
Eur Respir J. 2010 Feb; 35(2):368-72.
108名の無呼吸の検査した患者で慢性の咳(2ヶ月以上)の有無を調査。無呼吸患者の33%が
慢性の咳を訴え、咳の合併は女性、胸焼けの訴え、鼻炎の患者で多く見られた。ESS、AHI,
BMI、息切れの有無や喘鳴、口腔の乾燥感は無関係だった。
無呼吸とGERD、鼻炎は関連が見られ、GERD、鼻炎は慢性の咳の原因となりますし、無呼
吸の重症度と咳には相関がありませんので、無呼吸と咳は直接の関連はないかもしれません
が、3人に一人が慢性の咳とは頻度高いですね。
Chin K, Oga T, Takahashi K, Takegami M, Nakayama-Ashida Y, Wakamura T, Sumi K,
Nakamura T, Horita S, Oka Y, Minami I, Fukuhara S, Kadotani H.
Associations between obstructive sleep apnea, metabolic syndrome, and sleep duration, as
measured with an actigraph, in an urban male working population in Japan.
Sleep. 2010 Jan 1; 33(1):89-95
Type3在宅睡眠検査とアクチグラフィーを275名の男性労働者に施行し、検診結果と比較した。無
呼吸の重症度とメタボリック症候群の有無は相関があったが、年齢とBMIの補正後には相関
はなくなった。重症のOSAは、68名のメタボリック症候群の16.2%(6人に一人)に見られたが、
207名の非メタボリック症候群では2.4%(40人に一人)に見られたのみで7.8倍メタボリック症候
群でみられやすかった。重症のOSAでは睡眠時間が有意に短かった。メタボリック症候群でも
睡眠時間が有意に短かった。
労働者の年齢層では、メタボで無呼吸の患者さんが8倍多く見つかるということですね。重症の
無呼吸で睡眠時間が短いのはなぜなのでしょうか?当院のCPAP症例でもこの年齢層の重症
SAS患者さんの睡眠時間は確かに短い印象がありますね。
Frohnhofen H, Heuer HC, Kanzia A, Firat A.
Influence of type of treatment for sleep apnea on activities of daily living in a sample of
elderly patients with severe sleep apnea.
J Physiol Pharmacol. 2009 Nov; 60 Suppl 5:51-5.
200名のODI30以上の高齢者(平均年齢81歳)に、ADLをBarthel-indexを用いて評価した。入
院時にCPAPを受け入れた22名、酸素療法を希望した42名、どちらも希望しなかった136名で、
入院時と退院時のBarthel-indexはそれぞれ48+/-35 to 72+/-28(CPAP)、39+/-23 to 61+/-
20(O2)、42+/-28 to 49+/-30(未治療)で、CPAPと酸素療法で有意にADLの改善がみられ
た。
当院でも85歳以上の高齢者でCPAPを開始後ADLが改善したという方が数名おられます。85
歳以上でもCPAPの導入に躊躇は不要でしょうか。酸素もCPAPと同様の効果が見られてい
ますね。
Vennelle M, White S, Riha RL, Mackay TW, Engleman HM, Douglas NJ.
Randomized controlled trial of variable-pressure versus fixed-pressure continuous positive
airway pressure (CPAP) treatment for patients with obstructive sleep apnea/hypopnea
syndrome (OSAHS).
Sleep. 2010 Feb 1; 33(2):267-71
181名のAHI15以上で新たにCPAPを導入したOSAS患者を対象に固定圧と変動圧のCPAPを
それぞれ6週間装着し、症状、ESS CPAP使用時間、QOLなどを比較した。試験後72名が固
定圧CPAPを、69名が変動圧CPAPを希望した。ESSは変動圧9.5 固定圧10.0と変動圧でわず
かだが有意に低かった。CPAP使用時間は変動圧4.2時間固定圧4.0時間と変動圧でわずかだ
が有意に長かった。
Douglas NJの施設からの報告ですが、従来と同様の結果ですね。基本的には固定圧CPAPと
オートモードには優劣はないのでしょうね。
22年2月 更新
Chami HA, Baldwin CM, Silverman A, Zhang Y, Rapoport D, Punjabi N, Gottlieb DJ.
Sleepiness, Quality of Life and Sleep Maintenance in REM vs. NREM Sleep-Disordered
Breathing.
Am J Respir Crit Care Med. 2010 Jan 21; .
5649名のSHHS登録患者さんのサブ解析です。REM睡眠中のAHIはESS、SF-36、熟眠感
と相関がなかった。NREM睡眠中のAHIは上記と相関があった。
REM睡眠に特異的にみられる呼吸障害は自覚症状には悪さをしないということですね。
Joho S, Oda Y, Hirai T, Inoue H.
Impact of sleeping position on central sleep apnea/Cheyne-Stokes respiration in patients
with heart failure.
Sleep Med. 2010 Jan 19; .
チェーンストークス呼吸を呈する25名の心不全患者(CSA10以上、OSAS5以下)で側臥位で
AHIが50%以上低下する体位依存群12名と低下しない非体位依存群13名の比較で、非体位
依存群の方がBNPが高く、EFが低くかった。年齢とBNP,循環時間が非体位依存群の独立
の危険因子だった。治療により非体位依存群の8例全例が体位依存群になった。一晩の側臥
位睡眠でCSAとBNPが改善した。
CSRの半数の患者さんは体位依存性なんですね。心不全の改善とともにどの体位でも見られ
たCSRが仰臥位だけになるんですね。とても興味があります。メカニズムが知りたいですね。
Abe H, Takahashi M, Yaegashi H, et al
Efficacy of continuous positive airway pressure on arrhythmias in obstructive sleep apnea
patients.
Heart Vessels. 2010 Jan; 25(1):63-9.
1394名の日本人でPSG検査時の不整脈を調査。AHI5以下の非無呼吸群44名に比べて無呼
吸群(重症785名 中等症368 軽症197)では一過性心房細動、SVPC、PVC、洞徐脈、洞停
止が多く、CPAPを行った316名では、一過性心房細動、PVC、洞徐脈、洞停止が有意に減少
した。
睡眠時無呼吸症候群で、不整脈が増えるか、治療で改善するかは、以前から検討されていま
したが、結果は一様ではなかったと思います。このようなデータの積み重ねが必要ですね。
Tanaka S, Shima M.
Assessment of Screening Tests for Sleep Apnea Syndrome in the Workplace.
J Occup Health. 2010 Jan 28;
日本の運送会社に勤務する男性で、終夜酸素飽和度を測定し、3%ODI15以上を睡眠呼吸障
害とすると 715名中108名(15%)が睡眠呼吸障害で、家族からいびきや無呼吸を指摘されて
いる方と肥満の方が多かったが、ESSで測定した眠気とは相関はなかった。
当院でも、ESSと無呼吸の重症度は相関ありませんでした。2010年1月からESSをJ-ESSに
変更しましたが、従来のESSとJ-ESSはまったく結果が異なっていますので、今後はJ-ES
Sの結果での検討が必要ですね。
Othman M, Gordon SP, Iscoe S.
Repeated inspiratory occlusions in anesthetized rats acutely increase blood coagulability as
assessed by thromboelastography.
Respir Physiol Neurobiol. 2010 Jan 21; .
麻酔をかけたラットに2分毎に30秒の気道閉塞を3時間して、3時間後に凝固能を測定すると
気道閉塞をしたラットで凝固しやすくなっていた。
無呼吸症候群で脳梗塞や心筋梗塞が多い要因の一つに凝固能の亢進が考えられています
が、その基礎データですね。